世の評価、マスコミの評価

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運用ビジネスで昔から悩ましい問題とされたきたのが、次の2点である。

1点目は、世の評価とりわけマスコミの評価では、直近の運用成績をことさら大きくとらえたがる。

直近の成績がすごいよという評価をするにあっては、他との比較でもって優劣を語ると説得力を増す。

そこで、できるだけ比較差が大きく出るような期間でもって、「見てごらん、このファンドはすごいよ」と報道する。

あるいは、たとえば最近のさわかみファンドは元気がない、日経平均と変わらなくなったという報道。

たしかに、この数年間をみれば、日経平均と大差ない成績だ。 しかし、運用の中身をみれば、元気ないどころではない。

ましてや、設定時からの成績比較では、もうお話にならない。 日経平均は2万円前後だったのが、いま2万3800円。

一方、さわかみファンドは1万円でスタートしたのが、いまや2万6000円台だ。 1.2倍に対し、2.38倍だ。

そういった圧倒的な大差に対し、マスコミは「過去は過去、大事なのはこれからだ」とくる。 これが、2点目の悩ましい問題となる。

将来の成績を推測するにあたって、直近の成績の勢い(?)をマスコミはことさら重視する。

マスコミがすごいすごいと報道することによって、世の中も「このファンド、すごいんだろう」と判断しがちとなる。

これが、大きな落とし穴となる。 そこには運用の視点が決定的に欠けている場合が多々ある。

直近の成績がいいというのは、現在の相場に乗って追い風を目一杯受けて帆走している状態でもある。

ということは、その相場が終われば帆はヘタへタと萎むだけのこと。 そうなると、すごい成績とやらはどこかへ行ってしまう。

長期投資の運用では、相場とはつかず離れずの立ち位置を守り、いつも早め早めに買い仕込み、早めから売り上がりに入る。

早めの利益確定に入ると、どうしてもイケイケどんどんの他ファンドには差をつけられてしまう。

そんな成績差は、どうでもいい。 大事なのは、早めの行動で次のラウンドの準備を進めておくことだ。

ところが、マスコミからすると、次のラウンドの準備など報道しようがない。 まだ成果は上がっていないし、先のことなど誰も分からないのだから。

まあ、こんなわけで長期投資というものは、世間にもマスコミにもあまり評価されないのが普通である。

知ってくれているのは、長いお付き合いのファンド仲間である。 その人たちの口コミが、一番の広告宣伝となる。