消費税が10月から現行の8%を10%に引き上げられる。 メディアの報道では、国民の間で大分理解が進んでいるようだ。
理解といっても、どの程度だろうか。 これだけ実施を引き延ばしてきたから、上げるのは仕方がない。
そんな理解もあるのではなかろうか。 だから、消費税の引き上げは今回限りにしてほしいという見解もあろう。
あるいは、当分は10%でいってもらいたい、次はずっと先だといった世論もあるだろう。
考え方が本末転倒である。 ただただ国民の負担がきつくなる、その一面だけが強調されすぎている。
国は、もっときちんと説明すべきだ。 なぜ消費税を導入したのか、どうして税率を引き上げなければならないのかを。
かつて高度成長期のように経済が拡大発展していた頃は、企業の所得も個人の給料もどんどん増えていった。
それで、法人税や所得税による税収入はたっぷりあった。 その上、人口構成も若かったから社会保障の負担も限定的だった。
つまり、直接税による税収入だけで、国の財政は十分に賄えた。 だから、日本の財政はドイツ以上に健全だった。
ところが、バブル崩壊後は日本経済の成熟化もあって、企業所得も給与収入も伸びが一気に鈍った。
一方、バブル対策の景気浮上予算は急増したし、少子高齢化によって税による社会保障費負担も跳ね上がった。
直接税による国庫収入がガクーンと落ち込んだのに、予算は一気に膨れ上がったのだ。
それで、日本の国家財政は赤字に転落し、赤字はどんどん拡大して今日に至っている。
この状態を改善ないし解消するには、大幅増税か社会保障費を削るかしかない。
景気が落ち込んでいるのに大幅増税とくれば、経済活動は一気に収縮してしまう。 それは避けたい。
だからといって社会保障費を削れば、高齢者の生活が成り立たなくなる。 どちらも実行は難しい。
では、財政赤字の拡大を放置するのか? その先には財政破たんが待っている。 経済も社会もガタガタになる。
そこで登場してくるのが、消費税つまり間接税の導入である。 国民全員に広く薄く税を負担してもらって、国家財政を維持しようという考えだ。
実は、この考え方が広まったのは70年代後半から80年代にかけて、ヨーロッパや米国で経済が成熟化してからのこと。
成熟経済では成長が鈍り、直接税による国庫収入は相対的に落ち込む。 それを埋め合わすのが、間接税である。
この考え方がヨーロッパや米国では定着し、いまやどの国でも20%前後が当たり前となっている。
すこし前、フランスやドイツが20%の付加価値税を2%ほど引き上げたが、国民は何の反対もなく受け入れた。
グローバル経済で企業間競争が激化しているので、法人税はそうそう引き上げられない。
また、個人の所得税を高めすぎると、収入を増やそうとするインセンティブが削がれる。
そんなこんだで、いまや欧米では消費税すなわち付加価値税が税の主役にさえなりかかっている。
成熟経済に突入して30年以上もたっている日本で、まだ消費税反対といっている方がおかしい。
どうして、国はもっときちんと説明しないのかね。