金融庁の審議会報告で、老後に向けて2000万円は用意したいという文面があった。
それに対し、首相も財務相も不適切な表現といって却下しようとしている。
政府の立場上、そう言わざるを得ないのだろう。 だが、年金制度の現状からは、どうみても年金だけでは老後を暮せない。
かつては、10人近い現役層の年金積立で、ひとりの高齢者を支えていた。
それが、今では4人の現役層が一人の高齢者となり、そのうち2人以下で支えるようになる。
そうそう給料が増えない中、現役層一人あたりの負担をどんどん重くするのには無理がある。
となると、年金の支給額は減っていかざるを得ない。となると、年金だけで老後生活していくのは難しいということになる。
だから、2000万円はあって欲しいとなる。 普通に考えたら、誰でもわかること。
えっ、年金の不足額は税金でカバーする? もっと無理だよ。 いましばらくはなんとかなったとしても、そのうち財政運営そのものがバンクする。
今年の予算101兆円のうち、税収入が62兆円で、不足分は33兆円の国債発行などで賄うとされている。
恐ろしいほどの財政赤字だが、そんな綱渡り財政をもう20年以上も続けているのだ。
その結果、国債発行残高は976兆円に達し、うち日銀が459兆円も保有するに至っている。
国債発行残高の47%も日銀が保有するなんて、実質上の財政ファイナンスであり、不健全きわまりない国家財政を続けているわけだ。
財政ファイナンスは将来、悪性インフレを招くことになるので、法律で固く禁じられている。
法律違反をするわけにはいかないからと、日銀は銀行など金融機関に新発国債を引き受けさせ、それを片っ端から買いまくっている。
こんな綱渡り財政運営、永久には続かない。 となると、予算の33.6%を占める社会保障費34兆円を、果たして調達できるのか?
どう考えても無理である。 ということは、年金制度が潰れるとまではいわなくとも、相当に無理が生じてくるのは想像に難くない。
だから、金融庁の審議会で2000万円はあって欲しいとなったのだ。 それを政策当局が否定するのは、どう考えてもおかしい。
問題はここからだ。 2000万円あればいいだけでは、すまされない。 上に書いたように、いずれ悪性インフレの到来は避けようがない。
デフレ克服どころか、一挙に悪性インフレの到来だ。 そうなったら、2000万円では到底足らなくなる。
どうしたらいい? ともかく今から、できるだけ多くの預貯金を本格的な長期投資にまわすのだ。
2000万円とかの目標よりも、できるだけ多く長期投資の路線に乗せておこう。
そうしないと、悪性インフレで預貯金を筆頭に金融資産のほとんどを、根こそぎ持っていかれてしまう。
唯一、生活者とは紙の表裏の関係にある企業の株主になっておくことが、インフレに対抗できる財産保全の手段である。
さわかみファンドでは、そのあたりの荒波襲来を読み込んだポートフォリオを、ずっと以前から構築している。
その時になってからでは遅い。 早め早めに大津波からの回避と、そこでの敢然たる攻めの準備をしておこう。
どうにもならないほど大きな差がつくよ。