信託報酬を下げればいいのか?

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海外でも、日本でも、信託報酬の引き下げ競争が激化している。

販売手数料を下げる、最終的にはゼロにする。 こちらは、投資家顧客つまり受益者にとって全面的にプラスである。

だから、さわかみファンドは設定時からノーロード、つまり販売手数料ゼロを貫いている。

というか、実質的には日本で第1号のノーロード投信である。 この点、意外と知られていない。

問題は、信託報酬の引き下げ競争である。 こちらは、受益者にとってどれほどプラスとなるかは、大いに疑問である。

販売サイドからすると、いかにも投資家顧客に良かれの姿勢を打ち出せて、営業的なプラス効果を狙える。

しかし、あまりに低い信託報酬だと経営が成り立たなくなる。 たしかに、コンピュータを駆使して運用コストをギリギリにまで切り詰めることはできよう。

だが、顧客口座管理など業務部門は、そうそう縮小できない。 外注を増やしても、それなりのコストはかかる。

したがって、信託報酬の引き下げ競争には、自ずからの限界が噴出してきて、そう遠くない先に急ブレーキがかかろう。

ここで、はっきりさせたいことがある。 年間の信託報酬は基準価額の中で毎日365分の1ずつ支払われているということ。

つまり、信託報酬というコストは基準価額の中に織り込まれており、いちいち信託報酬の高い低いを云々するまでもないのだ。

信託報酬の高低など横へ置いて、しっかり比較検討すべきは、基準価額の高い低いと、その推移である。

いくら信託報酬がゼロに近いほど低くても、基準価額が大したことなければ、なんの意味もない。

たとえば、信託報酬が年0.1%でも基準価額の伸びが年1%ほどのファンドなど、投資家顧客にとってそう嬉しくはない。

それよりも、年1%の信託報酬ながら年5%強の基準価額の伸びを20年も続けている、さわかみファンドの方がよほど上である。

そうなのだ、投資家顧客に訴えるべきは信託報酬の多寡よりも、それを織り込んだ基準価額の高さと、その推移である。

逆をいうと、これほどまでに信託報酬の低さを競っているのは、どのファンドも基準価額が眼を覆いたくなるほど低いからだ。

成績が大したことなければ、せいぜい信託報酬の低さを訴えるしかないよね。 なんとも次元の低い、お粗末な競争である。