生活を豊かにして、経済を成長させよう

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日本のような成熟化が進んだ経済においては、これまでの生活パターンを大きく変えてしまう必要がある。

これまで慣れ親しんできた生活パターンを続けると、経済全体の成長力が鈍り所得も減って、先行きがどんどん不安になっていく。

戦後復興から高度成長期までは、国民は生活水準を高めるべく、懸命に働いては家電など耐久消費財を次々と手に入れていった。

その横で、明治以来ずっと植えつけられてきた「勤倹節約に努め、余ったお金は貯蓄すべし」という価値観を、日本国民は信仰さながらに守ってきた。

この二つが相まって、日本経済は世界に例のない長期高度成長を、それもほとんど国内資金でもって成し遂げたのだ。

国民が次から次へとモノを買い揃えていけば、企業は生産設備増強投資に追われる。

つまり、個人消費の爆発的な伸びと、企業の高水準の設備投資意欲とが相乗効果となって、日本経済を押し上げていったわけだ。

一方、工場建設などで巨額の資金が必要となったが、そのほとんどは預貯金で吸い上げられた個人資金で賄えた。

この図式は、経済の成熟化で大きく崩れていく。 国民の間でモノの買い揃えは一段落し、買い替え需要が中心となっていく。

そうなると、企業は過剰設備に苦しみ、新規の工場建設は激減する。 当然のことながら資金需要は落ち込み、金利水準も低下の一途となる。

この悪循環が、バブル崩壊後27年間の日本経済の低迷を引き起こした最大の要因である。

どうしたらいいのか? 国民がモノ以外の方向で消費を高めること、漫然と預貯金に置いておくのではなく、お金にも働いてもらうことだ。

すなわち、文化・教育・芸術・スポーツ・技術・寄附・ NPO ・ボランティアといった方向で、どんどんお金をつかうこと。

もうひとつは、長期投資でお金にゆったりと働いてもらうのだ。 どちらも、これまでの生活パターンを大きく変えてしまうことになる。

その効果は? たとえば、個人の預貯金マネー873兆円のたった3%でもいいから、上に書いた8つの分野にまわしてみよう。

それだけで、26兆円の新規消費発生となり、日本経済を5%も成長させてくれる。 5%も成長すれば、まわりまわって国民全体の所得増加につながっていく。

これが、成熟経済の活性化というものである。 生活の質を高め、それでもって所得が増えれば文句はないだろう。