1645兆円ともいわれる個人金融資産のうち、809兆円が預貯金勘定である。 その60数%が、60歳以上の高齢者層によって保有されているといわれる。
これらの数字や比率は、これから10年もしないうちに劇的な変化をはじめよう。 20年もしたら、日本人の個人資産保有がこんなに変わってしまったのかと驚くよりも、むしろそれがもう普通の感覚となっているはず。
先ずは、多くの人々の金融資産額は経済成長率がよほど高まらない限り、どこかでピークを打って急速な減少に入っていく。 その理由は、日本の家計貯蓄率が0%に近付いており、早晩マイナス圏に入っていくためだ。
給与やボーナスなど個人所得と年金受取り額それに預貯金の利子収入を合わせたものが、いわゆる家計所得の大半をなす。 そこから、税金や社会保障費負担額を差し引いた残りが、自分の自由になるお金すなわち可処分所得といわれるものである。
可処分所得から生活費や教育費さらには住宅ローンなどを支払って余った分は、貯蓄や投資にまわせる。 その比率を家計貯蓄率というわけだが、間もなくマイナス圏に入っていこうとしているのだ。
この10数年間、日本経済はずっとデフレ下にあった。 その要因の一つに賃金の上昇がなかった、むしろ低下傾向にあったことが挙げられる。 いまアベノミクスで賃金上昇をうたっているが、さてどこまで浸透するだろうか。 まあ、良くてほんの少し上昇するぐらいだろう。
一方、年金の受け取り額は団塊の世代の受給本格化で一時的に増加しようが、それが年金財政の悪化に拍車をかける。 どこかで、年金給付額の大幅減額に追い込まれることになろう。 預貯金の利子収入に至っては、1992年9月からの低金利政策でスズメの涙にもならない額のままだ。
その横で、消費税が8%から10%への上昇は時間の問題である。 日本の財政赤字の酷さからみても、そう遠くない先に先進国平均の18%弱へ、あるいはそれ以上に引き上げざるを得ないだろう。 また、社会保障費負担はじりじりと上がってきている。
家計所得はそう増えないのに、税金や社会保障費の負担は尻上がりに上昇していく。 となると、可処分所得はどんどん減っていき、家計貯蓄率はマイナス圏に入っていくのも時間の問題だろう。
そう、このままいくと平均的日本人は、貯蓄の食い潰しで現在の生活水準を守らざるを得なくなる。 いずれインフレの嵐が襲ってくるだろうが、もうそうなると眼も当てられない惨状となろう。
こう考えてくると、個人金融資産残高は減少傾向に入っていくと覚悟せざるを得ない。 とりわけ、年金生活者の貯蓄残高急減が顕著となろう。 ということは、あるあるといわれてきた高齢者層の金融資産残高だが、みるみる減っていくことになる。
次に、われわれ長期投資家が中心となるが、本格的な長期の株式投資を進めていた人々は、インフレにも乗って金融資産の大幅増加が見込まれる。 いまのうちから預貯金を減らして、株式への資金シフトをしていた人ほど、その流れを堪能しよう。
もうお判りだろう、預貯金にしがみついている高齢者層の多くは、これから急激に資産残高を減らし始める。 その横で、現役層中心に積立て投資やら、本格的な長期投資やらを進めていった人たちの金融資産保有は尻上がりに増加していく。
気がついたら、日本の個人金融資産保有者が大幅に入れ替わり、資産の内訳も劇的に変化してしまっていたということになろう。 その歴史的な変貌を、さわかみファンドは先頭を切って体現していくことになる。