金利ある世界への回帰

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世界のインフレ警戒は、やや落ち着いてきた感がある。 とはいえ、急激な物価上昇が収まってきた程度。

40年ぶりのインフレだ、賃上げ圧力も根深く、そう簡単には鎮静化しないだろう。

その中で、各国の金利は急上昇し、先進国中心のゼロ金利は過去形になってきた。

相変わらずゼロやマイナス金利政策にこだわっている日本も例外ではなく、いずれは金利上昇の波が襲ってこよう。

そう、各国の経済が金利のある世界へ回帰していこうとしているのだ。

当然のことながら、ゼロ金利で資金はいくらでも借りられるといった甘い経営環境は、もう許されない。

これから時間の経過とともに、より多くの企業が淘汰の道を歩んでいくことになろう。

その部分だけを取り出すと、景気にはマイナスとなろうし、失業も増える。

しかし、これは世界ならびに日本経済の健全化には、避けて通れない道である。

そもそも金利負担や、資金繰りの苦しみを乗り越えることで、企業経営者は鍛えられる。

なのに、この15年間というもの、先進国中心にゼロ金利やマイナス金利で企業経営者を甘えさせてきた。

日本に至っては、1994年からの超低金利政策に端を発して、ゼロ金利そしてマイナス金利へと進んできた。

よくいわれるゾンビ企業を、これでもかこれでもかと大量生産し続けてきたわけだ。

ところが、金利の復活で企業経営に甘えは許されなくなる。 いってみれば、不況の効用に近い効果が期待できる。

昔から不況の効用といわれるように、不況時には多くの企業が淘汰されていく。 大量の失業も発生する。

それは、競争力を失った企業が淘汰されていくことで、資本や労働力の再分配につながっていくことを意味する。

つまり、より強い企業が生き残り、そちらへ労働力が移転していくことで、景気回復につながっていくわけだ。

それが、健全なる経済の姿である。 そう、金利のある世界への回帰は歓迎こそすれ、怖れるものではない。

日本の金利も、そのうち上昇に転じだすだろう。 日銀や国の財政は金利上昇で、苦しい状況に追い込まれよう。

そのあたりは、あらためて書くとして、ゾンビ企業の大量淘汰は、日本の労働力不足問題を一掃しよう。

この30年あまり、国の政策頼みや税金で食っているだけといえる企業や外郭団体を大量生産してきた。

その結果として、財政の肥大化や国の借金の増加のみならず、労働力不足問題に追い込まれてきたわけだ。

それが、金利ある世界へ回帰することで、ゾンビ企業の脱落と労働力の移転が促進されるのだ。

大きな混乱は避けられないが、まったく違った日本経済の姿が見えてくるのを楽しみにしよう。