ややインフレ圧力が弱まってきた。 この調子で、来年にはインフレも収まっていくだろう。
そういった予測というか観測が、専門家の間で大半のようだ。 甘いと思う。
前から書いているように、いまのはコストプッシュ型のインフレの台頭であって、そう簡単には収まらない。
たとえば、仮にウクライナ問題が収束して、ロシアの石油や天然ガスが西側諸国へ再び供給され始めてもだ。
世界は地球温暖化の問題を抱えて、異常気象と自然災害に脅えている。
その対策として、エネルギー源の脱化石燃料は緊急のテーマである。
これは、ウクライナ問題より前からの課題であって、そう簡単には克服できそうにない。
再生可能エネルギーへのシフトで優等生を自認してきたドイツにおいても、まだ電力供給の半分は化石燃料などに頼っている。
中国はじめインドなど人口が多い新興国では、コストの安い石炭火力をどんどん増やしている。
日本においても、福島での原発事故から11年たったが、国は原発の安全性確認と再稼働への調整ばかり。
民間で太陽光発電や風力発電の利用が進んでいるものの、日本全体では遅々としている。
ことほど左様に、脱化石燃料へのシフトは、まだまだ時間がかかるのは避けられそうにない。
となると、エネルギー需要のコンスタントな高まりは、石油や天然ガスの価格を高止まりさせることになる。
このように、エネルギーひとつとっても、そう簡単にコストプッシュ要因は解決できそうにない。
つまり、インフレ傾向が続くことを覚悟しておいた方がいい。
それよりも、各国で国民のインフレ耐性が弱まっていることが懸念される。
インフレ耐性? そう、日本はじめ各国で低所得層の割合が増加したり高齢化の進展で、物価高が生活を脅かす度合いが増している。
現役層であれば、1年~2年のズレで賃金が上昇し、インフレに対抗できる。
しかし、低所得層や年金生活者にとっては、物価高はきつい。 日々の生活に、ずっしりと重くのしかかってくる。
それで、冒頭に「インフレを甘くみないよ」と書いた。 それは、専門家といわれている人たちに対してもだ。
専門家の間でも、70年代のインフレや債券の地獄を経験している人は少なくなっている。
だから、どうしても現在進行形のインフレに対しても、そのうち収まるだろうと気楽に考えてしまいがちとなる。
まあ、読者の皆さんは我々と一緒に、しっかりと長期投資をしてくれると、ありがたい。
実体経済から一歩も離れずに本格的な長期投資をしていてくれると、インフレにも乗れてしまう。
一方、なにもしていないと、厳しいことになるのは避けられないだろう。