金利のある経済へ、第一歩

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日銀が政策金利を、0.25%へ引き上げた。 長い長いゼロ金利の時代が、やっと終わってくれる。

といっても、このまま金利が普通の水準の3%前後にまで上がっていってくれるかとなると、道は遠い。

先ずなによりも、日銀の財務や国の財政が金利上昇で、どんどん苦しくなっていく。

日銀は、国債を総発行残高の53%まで金融機関から買い入れてきたが、支払い代金は当座預金として積ませてある。

いわゆる日銀当座預金だが、すでに560兆円ほどの残高となっている。

その預かり勘定に対する金利支払いが、これから発生するのだ。 1%の金利上昇で、5.6兆円の金利支払いだ。

国にとっても、毎年の予算編成で国債の新規発行分と借り換え発行を合わすと、100兆円を超している。

これまではゼロ金利で発行できたが、これからは金利上昇に応じた金利負担がのしかかってくる。

そういった台所事情もあって、日本の政策当局はゼロ金利にこだわってきたが、もうそれも限界に達した。

もっとも、物価動向からみるに、日本の金利がこれからどんどん上昇していく状況にはない。

したがって、まだ当分は日銀も国も金利上昇で大慌てといった状況には追い込まれないだろう。

とはいえ、ゼロ金利政策など力まかせで、中央銀行や国が価格を抑え込んでいた段階は終わる。

ここから先、金利のある経済に戻っていくことで、諸々の価格形成が経済合理性を反映したものに回帰していく。

これは大歓迎である。 諸々の価格形成に国などが関与すると、それだけ経済活動が不自然となってしまう。

当然、そこから発信される価格情報も人為的で、かつ歪んだものとなっていく。

そういった歪みが積もり積もって、世界的なカネ余りバブル高マーケットとなっているわけだ。

現に、先進国を中心に中身の伴わない張りぼての経済拡大が続いてきた。

その横で、世界的に低所得層の拡大や貧困化という、置いてきぼりを食らった実体経済の姿が顕在化してきている。

米国も含め世界的な低所得層の拡大や貧困化は地政学リスクを高め、それが賃上げ要求など根の深い物価上昇圧力となっている。

ここから先、世界的なインフレ圧力や金利上昇、張りぼて経済の急収縮など、いろいろ動きが出てこよう。

どれもこれも、経済合理性が働きだしたからのことであり、大きな混乱は避けられない。

そして、落ち着くところに落ち着いていく。 人為的かつ力まかせの経済から、合理的な経済活動への回帰だ。

われわれ本格派の長期投資家にとっては、待ってましたの展開となっていくわけだ。