金融緩和中毒

Browse By

世界的なインフレ圧力を、各国は金利の引き上げでもって生活者への負担を和らげようと躍起である。

ひとり日銀だけは、金融緩和政策とゼロ金利を維持すると頑張っている。

なにがなんでも、長期金利を0.25%に抑え込んでおくという方針で、国債を買いまくっている。

黒田総裁は、日本のインフレは低めだし、中小企業の経営を圧迫するから金利上昇を阻止するといっている。

その裏には、金利を上げたくない台所事情があるのだろうと推測したくなる。

金融緩和政策を維持するためにと、日銀が高値をどんどん買い込んできた国債の残高が500兆円を超している。

それらの保有国債だが、金利が上昇すればするほど価格は下落し、大きな評価損を抱え込むことになる。

その点、日銀は国債の満期保有を前提としているから、評価損は気にならないということはできる。

ところが、金融機関などからの国債購入代金は実際には支払わず、日銀の当座預金として積ませている。

日銀の当座預金勘定は560兆円ほどになっていて、金利が1%上昇すると5.6兆円の利子支払い負担が発生する。

米国のように3%の金利上昇だと、16.8兆円の利払い負担が日銀にのしかかってくる。

とんでもなく巨額の利払い負担である。 なにがあっても金利上昇を認めないと言いたくなるはずだ。

実は、日銀の台所事情だけではない。 国家財政においても、金利上昇は厳しい現実を突き付けてくる。

毎年の予算の40%近くを国債発行で賄っているだけではなく、コロナ対策やインフレ対策といった追加予算でも国債は随時増発されてきた。

これまではゼロ金利だったから、野放図な国債の増発にも、さしたるブレーキもかからなかった。

それが、金利上昇局面に入ってくるや、利払い負担が重くのしかかってくる。

そうなると、一般予算編成も臨時予算の編成にも大きなブレーキとなってくるのは間違いない。

一方、民間に眼をやると、多くの企業がゼロ金利と資金はいくらでも貸りられるといった甘えの経営に、どっぷり浸かってきた。

そういった企業にも金利上昇の圧力が、重くのしかかってくる。 資金もそう簡単には借りられなくなる。

こう書いてくると、日本全体が金利上昇は困るということもできよう。

そう、日本全体が金融緩和の中毒に侵されているのだ。 失われた30年も、金融緩和中毒の30年であった。

とはいえ、それは日本の事情であって、世界的なインフレ圧力と金利上昇の流れには、抗いようがない。

どこかで、日本の金利も噴き上がることになろう。 酷いことになるが、われわれは長期投資家は堂々と大混乱を乗り切ろう。